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東京地方裁判所 昭和44年(ワ)1929号 判決

被告 日興信用金庫

理由

一、請求原因第一項については当事者間に争いがない。

二、《証拠》によれば、訴外馬場信勝は東京都下水道局長に対して有する金二、〇四四万九、七二六円の債権を昭和四四年二月一三日ごろに原告に譲渡し、その旨を通知するために、東京都下水道局長宛の債権譲渡書と題する書面に公証人小野田常太郎の同月一四日付の印章の押捺を受け、同日午後三時ごろに東京都下水道局に持参してその職員に交付したこと、さらに、同日午後零時から六時までの受付印のある内容証明郵便をもつて重ねて東京都下水道局長に右債権譲渡の通知をなしたことが認められ、右認定を動かすに足りる証拠はない。

三、ところで、債権の二重譲渡もしくはこれと同視すべき場合の権利の優劣は確定日附ある証書をもつてする通知または承諾の先後によつて決定されるわけであるが、これは通知または承諾の対抗要件ではなく、債権譲渡それ自体の対抗要件に関するものであるから、通知または承諾が確定日附ある証書をもつてなされればたり、その通知もしくは承諾行為のあつたことに確定日附を要するものではなく、また、その先後の決定も通知あるいは承諾の発信もしくは到達の日時によるのではなく、それがなされた書面に附された確定日附の先後によると解するのが相当である。

四、そして同一の債権につき債権譲渡と仮差押が競合する場合右債権の譲受人が仮差押債権者に優先するためには、債権譲渡の通知のなされた書面に付された確定日附が仮差押決定およびその正本の送達より先の日附でなければならないが、被告の仮差押の決定およびその決定正本の送達の各日附がいずれも昭和四四年二月一四日であることについては前記のとおり当事者間に争いがなく、また馬場信勝のなした二個の債権譲渡の通知は前記認定のとおりいずれも右と同日の二月一四日の確定日附ある証書によるものであるから、債権譲受人である原告がその仮差押債権者である被告に債権譲渡の効力を対抗できないのであり、結局原告の本訴請求は理由がないことに帰する。

よつて原告の本訴請求を棄却

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